2007年1月20日(土)から公開される映画「不都合な真実」 を観た感想を以前、法学館憲法研究所 の「今週の一言」に書いた。

http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20060925.html


「地球環境をお金に換算すれば」と題したその一部を以下に引用する。


かくして洪水はわれらが魂に及び

国家権力、圧倒的な経済力の前に国民は無力だということを思い知らされる戦後の60年だった。民主主義は結局実現できていなかったのだと最近思う。うそっぱちの「」つき民主主義をあがめてきたのだと。だからこそ、今その意味を根源的に問うことなくしては真の意味での国民による政治なるものを手にいれることはできないだろう。

1999年にNHKで「エンデの遺言」とい番組をチームで作った。ドイツのファンタジー作家ミヒャエル・エンデは全ての問題の根源に経済システムがあると言い残して亡くなった。私たちは共産主義と資本主義があると思ってきたが、共産主義もまた国家による資本主義に過ぎず、その資本主義は市場経済至上主義だったのだと。持てるものがより富を増やし、持たざるものはより貧しくなるしかない経済の仕組みをただ資本主義だと誤解してきたのだというのだ。

金儲けのためには何をしてもいい、それが自由経済だ。原子力産業はまさしくこの経済システムを象徴していると思う。

しかし、時代は変わった。先日、「不都合な真実」というアル・ゴアが主演しているドキュメンタリーを観た。地球環境が温暖化にいかに破壊されているか地球そのものの全体像を見せながらゴア氏は語っていた。恐るべき破壊が進んでいる。そして一つの天秤に一方には地球が、もう一方には金塊を載せて、資本家たちが、う~~んと悩んでいるとコミカルにその資本家を演じてみせる。誰がみても、地球というかけがえのない存在、自分たちを生かす環境を金、つまり経済のために犠牲にすることのばかばかしさが一目瞭然となる。私たちが浸っているこの経済システムと地球環境は共存できない。地球を果てしなくむさぼることはできない。

ゴア氏は最後にこの破壊を私たちの手で食い止めることはまだ可能だと言う。お金をいくら持っていても役にたたない日がこのままだと遠からずやってくるだろう。第二次世界大戦中がそうだったように。


「六ヶ所村ラプソディー」の根っこ


私たちの暮らしが核というものに結び付けられ、それによって生かされている限り解決はない。遠いオーストラリアで美しい湖沼地帯がウラン鉱の残滓で汚染され、豊かな天然水は二度と飲めない水となっている。イラクでは二度にわたって劣化ウラン弾が打ち込まれ戦争が終わっても(まだ終わっていないが)子供達から病気になり、大人のがんが飛躍的に増えている。チェルノブイリの周辺では未だに人が立ち入ることができない。映画の取材で訪れたイギリスのマン島では羊の肉がチェルノブイリの時に降った放射能雨のせいで未だに汚染されている。セラフィールド再処理工場の長年の操業でアイリッシュ海は世界で最も放射能汚染が進み、北極圏までその汚染は広がっている。

どんな暮らしを求めて私たちはこのような事を進めているのだろう。

「電気は必要だ」はそのまま「金は必要だ」と置き換えることができる。だが、それだけで私たちは生かされているのではない。この地上で最も環境破壊的な行為は戦争だ。これ以上戦争をすれば環境破壊の急激に進みもう修復は今でさえ不可能に近いのだ。憲法9条はこの世界を破壊しないためにどうしても必要なものだと思う。もはや戦争は選択枝にはないという現実を我々は肝に銘じなければならない。一機の戦闘機が練習飛行するだけでいったいどれだけの資源が無駄になっているのか。

これは真に現実的な事実だ。

憲法9条は理想主義でもなんでもない、世界の現実に鑑みればこれほど現実的な憲法は存在しない。

破滅か生存か、選択枝はない。

六ヶ所村の現実はたった一つの価値しか許さない社会だ。

原子力を受け入れることなしにあの村でサバイバルはできない。それは果たして豊かで幸せなことだろうか。

全ての問題はエンデが言ったようにつながっている。そのリンクを直視しなければならない。

日本で豊かに電気をつかったつけがいったいどこに行っているのか。

私たちの社会が持つ加害性を自覚する時だ。

この病をいやす、それは憲法9条の精神を実現することだろう。

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「不都合な真実」を観ると、アル・ゴア氏がいかに知的な人物であるか、わかる。こんな人が副大統領だったんだな、そしてブッシュに負けたことで世界は随分と悪い方へ変わったんだーということがものすごくはっきりと見えてくる。

我が国の政治家をかえりみて、ため息が出てしまう。

とにかくわかりやすい映画!

ゴア氏がアメリカから世界にかけて1000回以上も

行った講演のビジュアルはものすごく説得力に満ちている。京都議定書を批准しなかったアメリカ人にもその大切さを、シンプルに伝えることが出来ている。

ブッシュ陣営が中間選挙で大敗した理由にこの映画の全米におけるヒットも入っているかもしれない。

政治の力、言葉の力がいかに大切であるか、この映画は私たちに迫ってくる。

「不都合な真実」という映画から吹いてきた風がアメリカの政治を変えれば、世界も変われる。


kama

A Terrifying Message from Al Gore


A Terrifying Message from Al Gore
写真をクリックすると映像が見れるサイトに飛びます。English Only ですが。
Ameba blogはYouTubeを貼付ける事ができないようです・・・。

futsugou
「不都合な真実」予告編