週間「モーニング」を私は愛読しています。井上雅彦の「バガボンド」の絵が素晴らしい。「とりぱん」も野鳥と主人公の攻防がおもしろいです。そして弘兼憲史の「専務 島耕作」を今回ご紹介しようと思います。


simakousaku


今、出ている号ですが島専務は高速増殖炉の実験炉である「もんじゅ」の視察に行きます。案内の原子力研究機構の職員が「他の原子炉に比べると建設費も安くコストパフォーマンスは格段にいいですよ」と説明、見学の後いった居酒屋の女将に質問されて「「もんじゅ」はウラン238をプルトニウムゆう物質に変えることが出来る、これがよう燃えるんや!そのプルトニウムを燃やしながら同時にウラン238を効率よくプルトニウムに変えてゆく・・・例えてゆうならメシ食ったらウンコが出るそのウンコは栄養たっぷりなのでそれをうまく料理してまた食べるそこから出たウンコをまた料理して食べるこれを何度も繰り返すことができるんや」(女将)「その例え、よくわかったわリサイクルね!それなら燃料費もかからない」(職員)「ウランの埋蔵量は85年やけどこの新技術を使えば数千年分のエネルギーを確保できるんや。さらに温暖化の原因となるCO2を殆ど出さないで環境保護にも抜群の効果がある」(女将)「じゃ、世界中が高速増殖炉っていうの?それにしたらいいんじゃない?」「もちろん日本だけじゃなくフランス インド ロシアはすでに運転しているし、中国も実験炉を建設中や。近い将来高速増殖炉を世界中が使うことになるのは間違いない、なぜなら21世紀半ばには世界の人口は90億人を突破する。その後石油はこの世からなくなってしまう。はっきりゆうて原発反対なんて言ってる場合じゃないんや。そのことをもっと日本人は知らなあかんとおもうけどな・・・」島専務の会社は原発事業に新たに進出するという設定です。


monju もんじゅ

以上の漫画のシーンを読むと「もんじゅ」「原発」いいんじゃない、と誰でも思うのではないだろうか。しかし、また別の視点から見た情報もあるのでこの漫画のシーンで語られていることが正確かどうか疑問に感じることがある。例えば「コストパフォーマンスがいい」というが、12年前に「もんじゅ」はナトリウム漏れ事故を起こしそれを隠蔽する工作もあった過程で当時の職員が一人自殺をしている。以来、12年間、この炉を維持するために年間100億、通算1200億が投入された。もちろん税金である。そして高速増殖炉の建設には6000億かかるといわれている。「もんじゅ」はまだ実験炉にしか過ぎない、これから実証炉を建て、商業用の炉を建てて実用化するまでに政府は100年かかるだろうと言っている。これをコストパフォーマンスがいいと単純にいえるだろうか。燃料であるプルトニウムを取りだすために六ヶ所に建設された再処理工場は建設費2兆2千億円。稼動すればその後始末に19兆円かかるとされている。この炉の開発に日本は1兆524億円を既に費やしている。

2つ目は「フランス、インド、ロシアはすで運転している」-だが、フランスは高速増殖炉の開発に関しては断念、今あるフェニックスも来年は閉鎖されることになっている。インドのものもロシアも軍事用で発電用ではない。ロシアにおいてはプルトニウムすら燃料にしていない!ここはだから事実誤認としかいえない発言でしょう。三つ目「リサイクルね!」ですが、高速増殖炉はたとえ稼動したとしても「ウンコを料理して食べる」まで46年かかります。二倍のプルトニウムを燃料として

取り出すのに46年から90年かかるのです。この間に炉の寿命が尽きてしまいます。それはこの種の炉の使用済み燃料があまりにも毒性が高く、再処理するのに冷却期間が長くかかるからです。これでは一基の高速増殖炉が出した「ウンコ」を再び料理して食べるなど、できないのですよ。以上の事を作者の弘兼さんが知っていたのかどうか、私には解りませんが、確実にこの漫画が発したメッセージは伝わり、しかもその中身は正確ではないという問題が残るのです。

kama