昨日、山口県上関町から帰ってきました。新作の取材で上関町議会の撮影に行ったのですが、なんと議会が始まる5分前に議長命令でカメラを出すように要請され、むりやりだされてしまいました!理由は許可した覚えがないというのです。電話で許可を貰い、カメラを据えつけるまでは何の問題もなかったのに抗議しようにも議会が始まってしまったので抗議は不可能。当の議長は議会進行に入ってしまいました。町の職員に「こんなことをするとあなた方が後で困ることになりますよ、どういうことをしようとしているのか、解っているんですか?」と聞いたら、「議長はわかっていると思います」。つまり確信犯でした。地元の記者さんによると情報公開条例もないということ。
251人の町民が傍聴を希望していたが、くじ引きで入れたのは20人。議会には廊下があってそこにも住民が入れば傍聴できるにもかかわらず、この日は立ち入り禁止となった。町民が必死になってもっと傍聴を増やしてくれと頼んでも町役場の職員は一言も発せず、鍵をかけて阻止。議会の間中、もめあった。まるで密室裁判のような町議会の有様に驚いたし、町民の気持ちが踏みにじられていると感じた。町民の方たちの憤りはいかばかりだろう。


一方、カメラなしで傍聴したが、今回の議案、「田ノ浦の公有水面埋め立てに関する認可」。原発建設予定地の海を埋め立てる許可を中国電力が求めてきたものに町がどう向き合うかのということだった。
特に、この海は対岸の祝島住民にとっては最良の漁場、ここの埋め立ては死活問題だ。だからこそ、反対を27年に渡って闘っている。島からみても本当に間近に見える海に原発が建てば、島の生活は一変することになる。
議決は12人の議員で採られたが、賛成して起立した8人によって決まってしまった。それに至る過程において、議論はほとんどされなかった。ここは果たして民主主義の国だろうかと思わせるような内容。
町長は、「原発が建つことの責任をどうするのか?」という問いに「責任は町長の私にあります」と応えた。町長はいったいつまで任期にあるだろう?そして原発建設にかかる年月、その影響、出てくる使用済み核燃料、それらへの責任など考慮されているとは全く思えない。なんと無責任な責任発言だろう。住民への説明責任、情報の公開もできていないのに「責任を持つ」などと簡単に言ってしまうのは、どうしても議決を採りたかったからだとしか思えない。またたった一回の議会で決めてしまうような議題でもないはずである。問題になっている海域は漁業権の財産権を最高裁で争っている、つまり係争中であり、その判断を待つまで議論を重ねてもいいはず。その努力をする意志が全くないということも驚きだ。

山口県民の半分以上が原発建設に反対しており、建ってしまえば山口県のみならず瀬戸内海全体、出てくる使用済み核燃料の始末の問題など私たちも当事者であるのにもかかわらず、たった8人の賛成でこのような大きな決定がなされたことは衝撃的だともいえる。日本の民主主義の実態がここにある。また原発で経済がうるおう、町が活性化するという内実そのものにもこれから着目したいと思う。
山口県自体が中国電力の大株主という不思議な事実もある。

取材拒否をする事は公開が原則であるべき民主主義の否定であるということを上関の町議会議長に強く抗議したい。つまりそのような事をしておこなった決議そのものが自らの行為によって否定されるということなのだ。
本当に意味のある決議にするつもりなら一人でも多くの住民が傍聴できる努力をし、情報を公開する姿勢を示さなければならない。これからの町のためにもそうあって欲しいと思う。

当日の様子はこのブログでも詳しくレポートされています。
http://d.hatena.ne.jp/conokix/



kama